痛みに耐えきれず、破綻した場合、成人では大別すると二つの病気に陥る。「神経症」(ノイローゼ)と、「心身症」である。神経症とは、ストレスによって精神的な変調を生じる心の病である。過度の緊張の際、動悸が高まり、手や額に汗をかき、息苦しさのために死ぬのではないかと不安に陥る「パニック障害」などが代表的なものである。心身症とは、胃、十二指腸潰瘍、気管支ぜんそく、潰瘍性大腸炎など、ストレスによって身体的な病気を引き起こす疾患群を指す。一方、心の破綻を防ぐためにストレスを和らげる方法を模索する場合がある。スポーツ、飲酒、おしゃべり、買い物、カラオケなどのいわゆるストレス解消法である。飲酒はエチルアルコールという薬物、おしゃべりは気のおけない他人の存在、カラオケは歌によって心のウサ(リストレス)を吐き出させる。買い物は高揚感や陶酔感、スポーツは身体的な興奮によって心のウサを洗い流す。ところが、ストレス解消法自体にのめりこみ、習慣化し、弊害が生じるようになり、自分のカではやめることができなくなった場合をアディクション(依存症あるいは嗜癖)発生に関与する要因の重みが異なる。アルコール依存症という最も古典的でオーソドックスなアディクションには、酒が飲めるという体質が発生に大きく関与する。ギャンブル依存症は、幼少期に刷り込まれたギャンブル経験などの生育要因や、生来の空虚感が強いという性格要因が大きな役割をもつ。過食症は、食べることに親和性をもつ女性かつティーンエージャーであるという基本属性が大きく影響する。機能不全家族に育ったという生育要因も見逃せない。本書のテーマであるラブ・アディクションは、酒も飲めない、ギャンブルにも興味がない、食べることにも引かれないような人が、男女関係のなかに癒しの場を求めようとするのであろう。癒しの手段であったはずの男女関係ではあるが、慢性化し、強化され、さまざまな問題が出現してくると、ラブ・アディクションができあがると考えている。神経症や心身症、アディクションに陥らないで、なんとか持ちこたえてはいるが、心の疼きに耐えかねて生きにくさを感じている人々がいる。ういった人々はアダルト・チルドレン(AC)と呼ばれている。アダルト・チルドレンは病名ではなく、状態像である。漠然と生きにくさを感じてはいたが、自分をどのようにとらえ、どのような方法で治療したらよいか分からない人々にとって、アダルト・チルドレンという言葉が、キーワードとなる。最近、流行語のように使われているアダルト・チルドレンという言葉だが、生きにくさを感じている一群の人々の心の状態を規定し、おぼれる者にワラ(アダルト・チルドレンというキーワード)を提供したことに意味があると私は考える。ただし、概念の広まりによって、あてはまらない人々を困惑させる恐れもあるので、充分な注意が必要である。

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